いきなり私事で恐縮なのですが、現在「緑内障」という病を患っております。この病は不治の病で、視界がどんどんなくなり最終的には失明する病です。

なぜこの病にかかってしまったかというと、私は子供のときから視力が非常に悪く、両眼とも裸眼0.02の上、「透明なミミズのようなもの」が視界の中を浮遊するという「飛蚊症」も見られ、年とるごとにひどくなってきていました。「飛蚊症」は眼球の大部分を占める白い部分「硝子体」の汚れが原因で、眼科に相談すると「中身きれいなものに取り換える?」と提案され、ついでに「水晶体」といわれるレンズも交換しようということになって、両眼とも手術しました。その結果、透明なミミズの浮遊もなくなり、水晶体も変えたことで視力も1.2まで上がり、最初はいいことづくめでした。しかし、少しずつ「何か見える範囲狭くないか?」と思うようになり、それも眼科に相談はしていたのですが、それは流され続けられていたので、あるときに思い切ってこちらから「検査してください」と強く言いきって初めて検査してもらった結果、「緑内障」ということが判明しました。「視野検査」というもので検査しましたが、びっくりすることに、このときすでに右目も左目も視界の上半分がほとんど欠けていました。左目はさらに、中心当たりの視野が欠けてしまい、左目だけでは本も読めなくなっている状態でした。

 「緑内障」のことを詳しく言うと、進行性の病で、視神経に障害が発生することで視野が狭くなっていきます。日本人の失明の原因1位の病であり、私のように自覚症状がないまま進行してしまいます。40歳以上の日本人のおよそ20人に1人が緑内障患者でありながら、9割の方は自覚症状がないため緑内障にかかっていることに気が付いていない潜在患者であるというデータが報告されているようです。

 視野の欠損は不可逆性で、いったん欠けると現代の医学では元に戻りません。なので、治療は進行を止めるもしくは遅らせることであり、一生治療し続ける必要があります。眼圧が高いと進行することは判明しているため、病院ではおもに眼圧を測定し、治療には眼圧を下げるために1~数種類の目薬を使用します。それでも進行するときは手術もあります。手術の目的も眼圧を下げるためです。

 私の場合、目薬1本では進行が止まらなかったため、2本になり、今は3本使用しています。12時間ごとに点眼するものが1つ,24時間ごとに点眼するものが2つです。3ヶ月ごとに定期的に受診し、点眼による副作用の有無、眼圧、視野等を調べます。点眼を1回でも忘れるとすぐに眼圧が上がり視神経が損傷し視野欠損が進行してしまうからです。

 面白い感覚(…と言ったらまずいかな?)なのですが、一部分が見えないということは、「そこに実際あるのに、ないものと認識してしまう」ということです。見える部分の視力は変わらないので、もちろん車の運転もできるし、眼鏡をかけないと日常生活に支障をきたすなんてこともありません。ただ「見えない」のです。周りの景色は見えているのに信号機だけ見えない等。「ハリーポッター」の映画の中に出てくる「透明マント」に覆われた感覚でしょうか(私はこの映画は見たことがないのですが…)。

(※話が逸れますが「透明マント」のような物質は10年ほど前にすでに開発されています。「メタマテリアル」という負の屈折率をもった物質を使用。その物質で覆うと、光の屈折によって本人の姿は見えなくなり、後ろの景色が見えるというもの。「メタマテリアル 透明マント」で動画もあります。)

 私は、個人的には経過を楽しむようにがんばって意識しているのですが、実際失明に向かって進んでしまっていることはなかなか辛いです。正直失明はしたくないです。単純に怖いし見えないと楽しくない。けれど仕方ない。このような身体になってしまったのだから。私の場合は、身体のガタが最初に眼にきただけのことです。この辛さや不安は、どこまでいっても当の本人しか分かりません。ただ、誰であれいずれはどこかからガタがきます。壊れてきます。

 私は、今までできていたことが少しずつできなくなってきました。シリアスにいえば少しずつ「死」に近づいてきました。今回の出来事を含め、次回「生と死」「身体と病と心」についてお話ししたいと思います。