今回は、「本気」について、私の体験談と共に少し考えてみたいと思います。
私は、過去には集団塾の講師をしていたことがあるのですが、そのころから今まで、よく受験生とぶつかってきました。その中の1例をあげます。
ぶつかった内容は、「塾との約束事(次の授業までに、漢字の自主勉を30分やってくる)」を初日から破ったことでした。これを決めるまでに、私は、
・「計画的に勉強していない」という保護者の意見が出てきたことと、
・「間違えた個所の復習まで勉強が定着していない」という塾側の意見を、
・両方とも本人に伝えた上で、
・できる量を本人に選んでもらって、
塾との約束事として出したものでした。それを次の日いきなり、本人はやってこなかったのです。
私の言い分は、 「本気で考えて慎重に計画し、約束した宿題を初日から破った」こと。
塾生の言い分は、「本気で勉強していて、優先順位もあり本当に時間がなかった」こと。
私はこの約束事を決めるのに相当集中して本気で取り組んできたので、その塾生が初日から約束を破ったことにひどく腹を立てました。ただ、その子は初めて、自分の主張を言い続け、まったく引かなかったのです。「俺は勉強をしたくないなんてまったく思っていない。本当に他のことをしなければならなく、本当に時間がなかったのだ」と。
正直この出来事は私の中では大きな裏切りで、この子への信用は一気になくなりました。ひどく落ち込んだし、ひどく傷つきもしました。ぶつかったことに対して大きく反省もしました。また、そのときは何が正しくて何が間違っているのかさえ、最初は分かりませんでした。
そして、ずっと考え続け、1つの結論に至りました。
それは、「本気って諸刃の剣やな」ということです。
過去に私は、ある人に対して、本気で自分の思いを伝えていました。ただ、その相手は、わざとかわざとでないかは知りませんが、私の本気の話に対して、何とスマホを見始めました!その相手の行動に、当時の私は信じられなく、リアルに口をつぐんでしまいました。もちろんその行動をした相手への信用はなくなってしまいました。その人は、私から信用されなくなったのです。
これらのことで、私が感じたことは、
①.「本気」に対して「本気」に対応しなければ、取り返しのつかないことになる。
②.そもそも「本気」自体、いいことではないのかもしれない。
ということです。
①については、相手からの信用を大きく損なうという意味です。これは2度と取り返しがつきません。本気を馬鹿にされるというか、本気を本気ととらえてくれない行為は、本当に相手を傷つけます。心を深くえぐられる思いです。その感覚が分からなければいけない。私は、相手が「本気」だと感じたときは、自分のエネルギーを前面に出し、正面から受け止めるつもりでいます。今回の生徒とのぶつかり合いは、「本気」と「本気」がぶつかっていました。だからこそ、お互い相手に対して思うところが出て、結果収まった気がします。
ただし、大きな語弊がある言い方ですが、②についても考えてしまいます。
そもそも、塾生との約束さえも、こちらがもっと余裕があればぶつかることはなかったし、「本気」と言いながらそれは相手への気持ちの「押し付け」のような気がしています。「脅迫」と言ってもいいかもしれない。「私がここまで本気で考えたのだからやりなさい!」みたいな。
スマホ見られた事件も、「私が本気で話しているのだから聞きなさい!」みたいな。
「本気」。出すことが良いことと当然のように言われています。ネットで調べてみても、本気を出せないのが悪いみたいな情報しかありません。はたして、本当に「本気」になることはいいことなのでしょうか?
ここであえて、「本気」になったときの弊害を羅列していきたいと思います。
・相手や周りのことを考えなくなる。
・自分に余裕が持てなくなる。
・固執する
・決めつけてしまっている。
・人とぶつかる
・うまくいかなかったときに柔軟な考えが持てなくなる。
もちろん「本気」を出すことが悪い事だとは言っていません。ただ、それを出す場面や方法については、少し考えた方がいいのではないでしょうか? 上の2つの私の出来事は、どちらも場面や方法を少し間違えたように、今では思っています。
また、「本気」を相手に出されたときは、必ず「本気」で返さないと、これは100%取り返しがつかなくなると断言できます。
どちらにせよ、「本気」の取扱は慎重にしましょう!